食材から考えるサステナビリティ

食材から考えるサステナビリティ

 皆さんは毎日の食卓に上る食材を選ぶとき、どんなことを重視しますか?栄養バランス、味、価格、鮮度…。いろいろな視点があるかと思いますが、その中で今回は「サステナビリティ」を切り口に、食材とその生産について考えていきましょう。

目次

食材のサステナビリティとは

 そもそも、食材のサステナビリティとは何を意味するのでしょう。「サステナビリティ」とは辞書的に言えば「(環境を破壊せずに)持続可能な」という意味です。もう少しかみ砕いて言うと、「自然環境・社会環境に悪影響を与えることなく、将来にわたって生産、流通、消費を行い続けることができる」のが食材のサステナビリティということになります。

 具体的にはどういうことなのでしょうか。穀物の生産に必要な資源を例に考えてみましょう。米や小麦を生産するためには、一般的に「土地」「水」「肥料」「太陽光」といった資源を投入することが必要です。言い換えると、これらの資源をエネルギーとして投入することで、人間が食物として利用可能な形のエネルギーを生み出しているということになります。

このうち、太陽光や土地それ自体のエネルギーにコストはかかりませんが、水を引いたり、肥料を作り運搬し散布したりするにはエネルギーが必要となり、土地にも土壌改良が必要であれば別途エネルギーが必要となります。この投入したエネルギー当たりでより多くのエネルギー(収穫物)が得られれば効率がよく、エネルギー収支の観点においてサステナビリティの高い食材であるということができます。(もちろん、例えば田畑を開発する際に周囲の環境を破壊しないといった、エネルギー収支以外の条件も実際の食材のサステナビリティには含まれますが、今回はエネルギー収支に注目して話を進めることとします。)

食材の生産には、どれだけのエネルギーや資源が必要となるのか

 では、実際の食材の生産には、どれだけのエネルギーや資源が必要となるのでしょうか。どの食材の資源効率がよく、どの食材の資源効率が悪いのでしょう?これを比較する際に便利なのが、「バーチャルウォーター」という概念です。バーチャルウォーターとは、食料を生産する際にどの程度の水が必要かを推定したもので、「輸入分の食料をもし自国生産するとしたらどれだけの水が必要か」を考えるために生まれた概念なのです 。これは種類の異なる様々な食材を生産する過程で必要な資源量を推定比較することにも活用できます。

 環境省のデータによると、主要な食品の1kg当たりバーチャルウォーター量は以下の通りです。
牛肉……………20600L
豚肉………………5900L
鶏肉………………4500L
卵…………………3200L
米…………………3700L
パン………………1600L
人参………………183L
キャベツ…………117L
玉ねぎ……………158L
トウモロコシ…434L
じゃがいも………185L
大豆………………2500L
牛乳………………550L

こうしてみると、まず肉類に必要な水量がとりわけ多いことが分かります。家畜は飲み水の他、与える飼料を育てるためにも水が必要であり、穀物や野菜に比べて食べられる状態まで成長する時間も長いため、トータルで必要な水量が多くなるのです。同じ肉類の中でも、成長に時間のかかる牛は特に必要な水量が桁違いとなっています。

牛肉に代表されるエネルギー収支効率の悪い食材、すなわちサステナビリティの低い食材は、大量に生産し続ければその分エネルギーや資源を食いつぶしていくことになります。世界的には人口が増加し食料が不足している状況にあって、このような食料生産を続けることは困難です。そのため、肉よりもサステナブルなたんぱく源として、ミドリムシやコオロギといった生物の利用や、培養肉の製造などが検討・研究されているのです。

もちろん、牛肉の生産、消費を世界からなくすことはおそらく不可能です。しかし、毎日の食卓に上る食材を選ぶとき、消費者一人ひとりがよりサステナブルな食材を選んで買うことは、今日からでも可能です。その小さな心がけが、SDGsへの第一歩になるのではないのでしょうか。皆さんが購入する食材選びに迷ったとき、少しでも食材のサステナビリティについて思い出していただければ幸いです。


*1 環境省HP「バーチャルウォーター」
 https://www.env.go.jp/water/virtual_water/

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