3月3日はひな祭り。日本では源氏物語の時代から人々の間に広まり、大切に受け継がれてきた年中行事のひとつです。「桃の節句」とも呼ばれ、女の子の健やかな成長や幸福を願い、お祝いをします。
ひな祭りには、桃の花を飾るのが一般的ですが、近年深刻化する地球温暖化の影響で、将来的に桃の花が飾れなくなるかもしれないといわれているのです。
そこで今回は、ひな祭りに桃の花を飾る理由や、地球温暖化が桃の花に及ぼす影響について詳しく解説します!
ひな祭りに飾るひな人形は、事故や病気から子どもたちを守ってくれる「守り神」のような存在とされてきました。そのため、女の子が健康で幸せであるようにという願いを込めて飾るのが風習となっています。
では、桃の花を飾る理由とは何でしょうか。それは、桃の花には魔除けや厄除けなど、邪気を払う力や長寿をもたらす力があるとされているからです。
桃の花はもともと中国で栽培されており、日本に入ってきたのは弥生時代以前だといわれています。かつて中国では、桃の木は邪気を払い、長寿をもたらす効果があると言い伝えられてきました。
中国でお祝いの席によく、桃の形をしたお饅頭が出されるのはそのためです。そして日本でも、桃の花は縁起が良いものとして伝えられ、節句をお祝いするのにふさわしいと考えられたことから、ひな祭りに飾られるようになりました。
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ひな祭りに欠かせない飾りとなった桃の花。しかし、地球温暖化の進行によっては、将来的に桃の花が飾れなくなってしまうかもしれません。ここでは、その理由について解説していきます。
桃の花の開花時期は、おおよそ3月中旬から4月中旬といわれています。「ひな祭りよりも開花時期が遅いの?!」と驚かれるかもしれません。
実はひな祭りに飾られる桃の花のほとんどがハウス栽培で育てられたものです。しかし近年、地球温暖化の影響で桃の花の開花時期が早まっている現象が見られています。
このまま地球温暖化が進めば、桃の花の開花時期がさらに早まり、ひな祭りよりも先に咲いてしまうこともあり得るかもしれません。
現在、桃の木は開花時期が早まるだけでなく、枯死障害の現象があることも報告されています。枯死障害とは、草や木が完全に枯れ切ってしまう障害のことを指します。その原因として明らかになっているのが、地球温暖化による凍害です。
凍害は、桃の木が限界温度を超えて冷却された時に発生します。しかし、桃の木そのものの栄養状態が良くない場合には、限界温度より高い気温でも凍害を起こすこともあるといわれています。例えば地球温暖化によって秋から冬の気温が高くなると、桃の木は栄養状態が悪くなります。その後2月に気温が上がってから寒の戻りがあると、限界温度に達していなくても凍害を起こしてしまう木が出てくるのです。しかも、植えたばかりの幼木が被害を受けることが多く、農家を悩ませているのが現状です。
凍害は全国各地の桃の産地で増加しており、凍害による枯死リスクを軽減するために、アルミ蒸着フィルムや梱包などに用いられる気泡緩衝材(きほうかんしょうざい)などを木の主幹部に巻くなどして対策をとっています。また最近では接ぎ木によって凍害を受けにくくする方法も研究されています。
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桃の木を育てる農家の人々は、これ以上被害が及ばないよう必死で対策に取り組んでいます。しかし、凍害による枯死障害を防ぐためには、やはり地球温暖化を促進させないことが大切です。
ひな祭りのシンボルともいえる桃の花。可愛らしいピンク色の花をこの先もずっと愛で続け、そして飾り続けられるように、温室効果ガスの排出を抑える努力をするなど、環境に配慮した行動を心掛けていきましょう。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hrj/19/3/19_219/_pdf
https://adaptation-platform.nies.go.jp/db/measures/report_140.html