日本の春を代表する桜。首都圏などではかつて入学式の時期に満開の桜が咲き誇り、人々の心を晴れやかにしてくれました。しかし、ここ数年、桜の開花に変化が見られ、入学式には桜が残っていないといった現象が見られています。
また、お花見シーズンも期間が短くなったように感じませんか?このような変化の要因として考えられるのは、地球温暖化です。
このまま地球温暖化が進めば、将来的に桜が見られなくなり、お花見ができなくなる可能性も考えられます。
そこで今回は「お花見はどうなる?」をテーマに、地球温暖化が桜の開花に与える影響について解説します。
まずは、温暖化が桜の開花に与える影響について見ていきましょう。
桜の開花時期は、ここ40年間で早まったり遅れたりしているものの、全体的に見ると開花時期が早まっている傾向です。気象庁の「さくらの開花日の変化」を見てみると、日本列島全体の開花日のラインが北上していることがわかります。
春先の気温上昇に伴い、桜の開花日も早まっていることが、長年の研究結果から明らかになっています。
1956〜1985年の平年値では三浦半島から紀伊半島にかけての本州の太平洋沿岸と四国、中国地方でしたが、1991年〜2020年の平年値では関東地方北部から北陸西部まで北上するようになっています。
※参照 気象庁「さくらの開花日の変化」
ちなみに、2021年における桜の開花は、広島が3月11日、それに続いて福岡が12日、東京が14日となっており、1953年以降観測史上最速の記録といわれています。
しかし、暖冬だった2020年に関しては、鹿児島などの一部の温暖な地域では逆に開花日の遅れが見られています。理由は、休眠打破がうまく行えなかったからです。
休眠打破とは、眠っていた花芽が真冬の寒さで目を覚ますことをいいます。その後、春に向かって気温が暖かくなることによって開花する仕組みです。
休眠打破がうまくできないことで、開花日が遅れるだけでなく、咲き方にもばらつきが出るなどの影響が出ています。
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IPCC(気候変動による政府間パネル)が2000年にまとめた温室効果ガス排出シナリオ(SRES)によると、地球温暖化によって平均気温が高くなることで、開花から満開までの期間は短くなると予測されています。現在よりも2.1日短くなり、6.2日で開花から満開になるといわれています。
地点別に2つの期間2046年〜2065年、2081年〜2100年に分けて予測したところ、どちらも開花期間の日数は減り、差はほとんどないことがわかりました。ただし、九州地方においては、比較的変化が小さいとされています。
桜の開花期間が短くなることで、お花見シーズンも短縮され、人々が楽しめる期間が少なくなってしまうでしょう。
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このまま地球温暖化が続けば、桜が咲かない地域や咲いたとしても満開にならない地域があるとも予測されています。
ある地球温暖化シナリオをもとに将来の気温を予測し、2100年までの開花日のシミュレーションを行った研究によれば、種子島や鹿児島の西部では桜が全く咲かなくなることがわかりました。
また、九州南部や四国南西部、長崎県や静岡県、神奈川県の一部でも桜は開花するけれど満開にはならないという結果になっています。「満開」というのは、1本の桜の木のうち、80%以上の花がいっせいに開花している状態のことをいいます。
地球温暖化によって十分に気温が下がらず、休眠打破がうまく行われないため、桜が全く咲かなかったり、いっせいに咲かずにぱらぱらと咲き続け、満開にならなかったりするのです。
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バーチャル花見やドライブスルー花見など、新たなお花見の仕方も登場してはいるものの、春のお花見はやはり満開の桜の木の下で行いたいもの。そのためには、毎年きちんと桜が開花し続ける自然環境でなければなりません。
未来の開花日のシミュレーションのように、桜が咲かなかったり、満開にならなかったりすることのないよう、地球温暖化対策をより一層進めていく必要があるといえるでしょう。
日本の春の風物詩でもある、美しい桜とお花見がこの先も楽しめる未来を、一緒に目指していきましょう。
https://weathernews.jp/s/topics/202104/210185/#:~:text=%E3%80%8C%E3%82%B7%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%81%A7%E3%81%AF%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%91%A8%E8%BE%BA%E3%81%AE,%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/monitor/2018/pdf/ccmr2018_chap2.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/agrmet/65/3/65_65.3.5/_pdf/-char/ja