【SDGs10問10答】世界各地でSDGs活動に取り組む若い世代に、活動のきっかけ、各国のSDGs達成度、課題と展望、そして夢を教えていただく10問10答インタビュー。今回はベルギーで建築の課題に挑む建築学生、ルイス・ドゥアルテ・ランゲロックさん(23歳)にお話を伺いました。
中学生(14歳のころ)からです。そのころ私はベルギーの歴史、そして過去のいかなる出来事や選択によって、私たちが豊かになったのかを学びました。こうした選択のいくつかは奴隷制や森林破壊につながり、人々の生活や自然環境を傷つけました。
そして、過去のものだと思っていたそれらの出来事が、遠く離れた発展途上国では依然として起きていると私は学んだのです。今日の世界でも、最も弱い立場にある人々が、同様の状況で働いています。私は自分の日常的な行動と選択が、他の国の出来事につながっていることに気づきました。
私の行動と選択が、最も弱い立場にある人々の健康と教育に悪影響を及ぼし、廃棄物の増加や環境汚染、過剰な資源の消費へつながっていると気づいたのです。
自分が購入したものがサステナブルでエコロジーなものであったか疑問を抱いた私は、製品のサプライチェーンを調べ始めました。知識を増やし、最終製品よりも前の材料段階まで調査することを試みたのです。今の私は、家族、友人、同僚とこの情報をシェアしています。
私の目的は、世界中の不平等や貧困と闘うためには消費習慣を変えなければならない、ということを人々に認識させることです。それは資源を守り、世界中の傷ついた自然環境を回復させるための鍵でもあります。消費者として、私たちは変化を引き起こす大きな力を持っているのです。
ベルギーは、グリーンでサステナブルな開発を優先することにより、良い方向に進んでいると考えています。政府や公的機関はさまざまな手段を利用し、SDGsを達成することに力を注いでいます。
問題は、政府が遅滞なく強力なコミットメントを達成できるようにするためには、まだ改善が必要であるということです。SDGs達成までに残された時間は少ないのですが、州の組織が非常に複雑なため、重要な決定には時間がかかります。
SDGsが喫緊の課題であると思わない人がまだ多いために、多くの政治家はSDGsに積極的な立場をとることにより票を失うことを恐れています。
また一部の市民は、自分たちの生活様式を変えることを嫌い、革新的な環境保護論を脅威と見なしています。したがって、SDGsの目標が現実社会と繋がっているということについて、人々にしっかりと伝えることが非常に重要です。現在多くのフェイクニュースが広まり、メディアや科学者の独立性に対する信頼に悪影響を与えています。
そのため、社会に必要な環境保護の発展を加速するためには、社会のあらゆるレベルでのコミュニケーションを改善する必要があるでしょう。
目標12「つくる責任 つかう責任」は、サステナブルな消費・生産様式を確立することを目的としています。特に、天然資源の持続可能な管理と効率的な利用を実現すること、および世界の一人当たり食品廃棄量を半減することが重要な目標です。
他の目標は、企業が持続可能な事業活動を行い、サステナビリティに関する情報を定期的に報告すること、持続可能な開発の影響を監視すること、そして非効率的な化石燃料補助金の削減を推進することに焦点を当てています。
消費者の行動を変えることは、最もダイレクトな対応策です。そしておそらく、私たちの日常の行動に影響を与えるという点で、最も賢明な対応策でもあるでしょう。目標12は、取り組む余地がまだ多く残されている目標であり、またこの惑星と人類に最も重大な影響を与えうる目標でもあるのです。
目標11「住み続けられるまちづくりを」は、都市や集落を包摂的で、安全で、強靭で、なおかつサステナブルなものにすることを目的としています。
特に、適切で安全かつ安価な住宅と基本的なサービスをすべての人が利用できるよう確保すること、スラムを改善すること、安全で安価かつ利用しやすくサステナブルな交通システムをすべての人に提供すること、交通安全状況を改善すること、包摂的でサステナブルな都市化と人々の受け入れ、および統合された持続可能な人口居住計画と管理の強化を、すべての国で2030年までに実現することを目指しているのです。
また、この目標は2030年までに、世界文化遺産・自然遺産を保護するための取り組みを強化し、災害による死者数及び災害の影響を受ける人々の数を大幅に減らすことも求めています。
目標11と12は、現状を踏まえ、ベルギーで優先的に取り組むべきものだと考えます。SDGsの17目標は相互に関係し影響しあっているため、ベルギーがこれらのテーマにおいて大幅な改善を達成した場合、すべての目標を達成することも可能だと考えています。
またさまざまな報告を踏まえて、このことは日本を含む大多数の豊かな先進国にも当てはまると確信しています。
建築家としての私の役割は、私たちの用いる建築方法及び建築資材を変えることにあると考えます。建築家としての私の最大の関心事は、サステナブルな資材を選ぶことです。資材はどこから来たのか、どのように、誰によって製造されたのかを知ることなど、入念な調査が重要です。
環境と建築の伝統両方を守るためには、リサイクルまたは再利用が可能な、地元の資材を選ぶ必要があります。私は、サステナブルなライフスタイルを促進し、より少ない資源でより多くの仕事を、より良く成し遂げるよう努めます。
すべての家族に尊厳ある安全な家を提供するために、私が市民として貢献する最良の方法は、よりサステナブルで環境にやさしい選択肢を探すことによって、人々の消費習慣を変えることであると信じています。
新しい知見を柔軟に受け入れ、かつ批判的視点も持ちながら、学び続け、情報を得続けることが不可欠です。人は学校の卒業後も、教育を終わりにせず自分で続ける必要があると、私は強く信じています。人は自ら学び、自らを教え続けなくてはならないのです。
今日、多くの人が他者の意見を無視しながら、様々な問題について正解を知っているふりをしています。その結果ベルギーでもその他の多くの国でも、簡単な結論を喧伝するポピュリズムが強まっており、それを人々が信じるようになっています。この状況は私たちの社会制度と社会の団結にとってダメージであるのみならず、SDGsへの理解にとっても深刻なダメージです。適切な教育と正確なコミュニケーションは、SDGsの継続的な理解実現へのカギとなります。
今や、新たな技術革新は世界規模で容易に広がり、人々の協業を急増させています。協業、そして共有された知識は、新たなスタンダードとなったのです。
東京オリンピックは、国際的な人々の協業に支えられた、よりサステナブルで環境にやさしいあり方の優れた例だと思います。
成功とは、私たちの行動が私たち自身、他の人々、そして社会にプラスの影響を及ぼし始めたとき、起こるものだと私は信じています。したがって、成功とは必ずしも達成を意味せず、むしろ変革が行われている過程の状態なのです。
成功はささいなことの中にあります。例えば私が建物の設計に取り組む中で、建築過程で発生する廃棄物を減らすことに成功したとしましょう。これはより良い、よりサステナブルな解決策の提案に成功したということです。より多くの建築家が同じように廃棄物を減らそうと努力するでしょう。これが、私たちの行動が将来の建築方法を大きく変えると感じる瞬間です。
また建築に限らず、スーパーに行くなどの日常の行動においても同様です。エコバッグを例に挙げると、以前は持参している人をあまり見かけず、持参する私は少数派でした。しかし今ではこの傾向が逆転し、持参しない人の方が少なくなっていることが見て取れます。
これは非常に励みになる事実であり、たとえ時間を要しても、人々の習慣は変化させられるということを示しているのです。
最大の課題は、天然資源の持続可能な管理と効率的な利用、食品廃棄物の削減、そして持続可能な商習慣とフェアトレードといった事業の在り方を、企業が採用するか否かということです。
多くの大企業は、サプライチェーンや商品の生産方法を変更することを恐れており、従来のままであることが生産コストの上昇、そして商品価格の高騰につながることもよくあります。こういった大企業は市場を支配していることが多く、中には株主の求める金銭的利益を最大化することを唯一の目標とする企業も多く見受けられます。
しかし一方で、新たな栽培、生産、輸送の方法を模索し、SDGsの課題解決に取り組む中小企業や新興企業も多く存在しているのです。サステナブルな商品を購入する、すなわちその商品に投資することは、消費者としての私たちの責任です。
ヨーロッパ諸国ではこの数年間にわたり、古い製品を作り替えたり、再生したりしている企業に政府や公的機関が補助金による支援を行っています。この政策はさらに範囲を広げ、発展させるべきものです。
企業が生み出す利益の大部分が、グリーン・イノベーションや社会奉仕活動に投資されるようにして、都市やコミュニティの強靭さを高めるメカニズムが必要なのです。
このパンデミックは、ただSDGsの重要性を示したにすぎません。もし私たちがSDGsを事前に達成することができていたなら、この危機がもたらした多くの被害を出さずに済んだことでしょう。
SDGs、中でも目標11「住み続けられるまちづくりを」の主たる目的の1つは、危機を予測し予防策を講じることによって、実際に危機が発生したときに深刻な状況に陥らないようにすることです。
コロナ禍は私の目標追求には全く影響を与えませんでした。しかし一方では、私がこれまで感じていなかったものの存在を明らかにしました。言い換えれば、私たちが忘れたと思っていたものの存在を、です。
危機が発生した場合、人々はより他者を思いやり、柔軟な対応ができるようになる傾向があります。例えば高齢者や障害者のために布マスクを作ろうと人々が集まったとき、その傾向ははっきりと表れていました。
この事例のように、人々の絆は様々な形でしっかりと存在していたのです。コロナ禍は忘れ去られたかに思われた多くの古き良き習慣を蘇らせました。「共通の責任」「共同体への参画」ということが、単なる概念ではなく現実に行われていたのです。
このコロナ禍という出来事を通して、私たち、そして政府は、SDGsへの取り組みをより一層加速させることになると信じています。
消費者は、その価格である正当な理由がわかれば、もっと商品にお金を払っても構わないと思っています。あらゆる新たな取り組みの商品で見られるように、サステナビリティに配慮した商品は最初、価格が高いですが、商品が普及すると価格は逆転します。
とにかく、私たちはより少ない資源でより多くを行うことを学ぶ必要があります。これが意味するのは、私たちが手にしているものを正しく認識し、価値を認め、使い捨ての精神を改めなければならないということです。製品はゴミ箱に捨てられて終わるべきではなく、再利用またはリサイクルすることが当たり前になるべきです。
サステナブルな改善は、最初期の高コストを長期的には補うものになると、私は強く信じています。
すべてのものは相互に関連しているということは、社会の一部に対する特定の投資がさまざまな方法で返ってくることを意味しているのです。
私の夢は、すべての家族が尊厳ある、安全な家に住めるようにすることです。そんなことは不可能だと思われるかもしれませんが、私は今世紀中にこの夢を実現できると信じています。
それは、人々の絆と幸福のために、よりサステナブルで環境にやさしくなるよう社会の改善に取り組むことなのです。
日本の人たちには、自分たちが消費者として大きな影響力を持っていることを知ってもらいたいと思います。私たちは皆、SDGsを達成するための大きな力を持っています。
食べ物や商品を買うときに、サステナブルな選択をすることが大切です。
よりサステナブルで公正な社会の実現に向けて、消費と生産のシステムを飛躍的に進化させることができれば、不平等や貧困と戦うことができると私は信じています。