地球の気候は約10万年ごとに、氷期と間氷期のような気候変動をくり返してきました。
激しい気候変動によって絶滅した生物がいる一方で、多くの生物たちが環境に適した姿に進化し、存続しているという事実があります。
では、昨今急速に進む地球温暖化による気候変動の中でも、生物たちは進化し続けることができるのでしょうか。今回は気候変動によって生物はどのように姿を変えるのか、また、このまま気候変動が進んでも環境に適応して生きていけるのか、ということについて解説します。
地球上には3000万種にもおよぶ、多種多様な生物が存在しています。進化の結果、それぞれの生息環境に適応した形に変化した生物たちが、今日まで生き残ってきました。その変化は現在も続いています。
例えば、気候変動により体色パターンが変化したといわれるフクロウがいます。フィンランドに生息するモリフクロウは、茶色と灰色の2種いることが知られていますが、かつてはほとんどが灰色でした。なぜなら、白く雪景色が広がる冬に、外敵から身を守るためには、白に近い灰色の方が有利だったからです。
しかし、冬が温暖になったこの50年間で、灰色のモリフクロウは減少し、茶色いモリフクロウが増えています。
また、フロリダに生息する在来種のトカゲは、もともと木々の低い場所を住みかにしていました。ところが、キューバから侵入してきた外来種のトカゲにエサを奪われたため、これまでの住みかを捨て、高い所で生活するようになりました。その結果、トカゲの体に変化が起こります。手足の面積が大きくなり、木にくっつきやすい足になったのです。
このように、環境に適応した形に変化した生物の例は様々な国で観察されています。
例に挙げたフクロウやトカゲのように、すべての生物が環境に合った形に変化できるのかというと、そうではありません。また、その他の要因によって気候変動に適応できず、生きていくことが困難になる生物もいるのです。それには主に3つの理由があります。
ここでは、その理由についてそれぞれ解説していきます。
現在の地球温暖化による気温上昇のスピードがあまりに速過ぎるため、生物の進化が追いつかないという問題です。過去、約2万1000年前に間氷期から氷期に移行した時の気温変化と比較すると、気温上昇の速度は約10倍以上と言われています。
気候変動のスピードに比べて進化のスピードが十分に早ければ、変化しながら生き残ることが可能ですが、反対に進化の方が遅く追いつかなければ絶滅してしまうのです。
進化が遅い生物の特徴として、世代時間が長いことと、遺伝的多様性(種内の個性の違い)が低いことが挙げられます。世代時間とは、次の世代を残すまでの時間です。
進化は世代を越えた遺伝子の変化なので、世代時間が短い生物ほど進化が早く、世代時間が長い生物ほど進化が遅いと言えます。また、遺伝的多様性が低いと種の個性(色、形、模様、生態など)の違いがあまりないために、新しい環境に適応しにくいとも考えられるでしょう。
このように進化速度が遅い生物は絶滅しやすいと言われており、2050年までに地球の気温が2℃上昇した場合には、地球全体で3割以上の種が絶滅する可能性があると予測されています。
気候変動に加えて都市開発による森林伐採や河川の分断、ダムの開発など人間活動によって生息地を奪われた生物は少なくありません。
化学物質の放出などで海や川が汚れ、暮らしやすい場所へ移動する生物もが見られたり、また、海洋の魚類では気候変動による分布域の変化が多数報告されています。しかし、生息地の移動がうまくできなかった場合には絶滅の危機にさらされてしまうでしょう。
分布域が変わったからといって、必ず生きていけるとは限りません。生物が生息していくためには、気温や降水量などの気象環境に加え、食物の種類、外敵や病原菌の存在など、さまざまな条件が必要です。
また、気候変動によって生物の性質や生息地が変化することで、これまで関係していた他種の生物にも影響を及ぼします。
地球上の生物は食物連鎖で成り立っており、摂取していた植物や生物が絶滅してしまえば、それを食べていた生物も影響を受けることになります。一部の生物が変化することで自然界のバランスが崩れ、間接的に別の種の衰退をもたらす可能性は大いにあるのです。
進化が速く、環境に合わせてうまく適応できる生物もいれば、急速に進む気候変動に進化のスピードが追いつかず、絶滅する生物もいることがわかりました。また、進化や生息地の移動ができたとしても、生息条件が合わなければやはり生きてはいけません。
絶滅してしまった生物は、二度とよみがえらせることができません。絶滅を避けるためには、気候変動の進行を緩和させる努力が不可欠となります。
地球温暖化が進む最大の原因は、人間の活動による温室効果ガス(二酸化炭素)の排出です。私たちが使う電気やガスなどのエネルギーを節約するだけでも、二酸化炭素の排出を減らすことができ、生物のいのちを守ることへとつながります。
地球上の生物はお互いにつながり合い、支え合って生きているということを忘れてはなりません。私たち人間も、動物や植物から大切な恵みをいただいて生きています。いのちはつながっているということを深く心に留めておきましょう。
https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/81/column1.html
https://adaptation-platform.nies.go.jp/climate_change_adapt/qa/03.html
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h29_h/trend/1/t1_1_2_3.html
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/286.html