世界では、地球温暖化などの影響によって、絶滅の危機にさらされている生物が多くいます。また、人間の活動による森林破壊などの問題も次々と起こっています。一部の生物や植物がなくなってしまっても、私たち人間の生活には直接影響がないように感じるかもしれません。
しかし、実は生物多様性は私たち人間の暮らしに欠かせない、とても重要なものです。なぜなら生物多様性は地球や人間にとってさまざまな役割を担っているからです。
そこで今回は生物多様性とは何か、また私たちの暮らしに重要である理由について詳しく解説します!
「生物多様性」とは、簡単にいうと人間を含む地球上のすべてのいのちと、そのつながりを表した言葉です。例えば、微生物や細菌など目に見えないものから動植物など、さまざまな生物全体を指しています。
また、人間や動植物など、地球上に生息する生き物は、一人だけ、一種類だけでは生きていくことができません。
生物多様性とは、あらゆる生物と多様な関わり合いを持ち、互いにつながり合ってバランスを保って生きていることを意味しています。
40億年という歴史の中で、地球上の生物は環境に適応しながら、進化を重ねて生きてきました。誕生した生物の種類は、なんと3000万種以上といわれています。この驚くべき数の種をまとめた生物多様性は、大きく分けて3つの種類にわかれています。
「生物多様性条約」は、生物多様性の保全を目的とした国際条約です。その中で生物多様性は、以下のように3種類に分けて考えられています。
1、生態系の多様性…森林、河川、里地里山、サンゴ礁、干潟、などのさまざまな自然があること
2、種の多様性…微生物、細菌、虫、魚、鳥、花、などさまざまな種類の生物がいること
3、遺伝子の多様性…同じ種でも異なる遺伝子を持つことにより、色や形、模様、毛の長さ、顔かたちなどがそれぞれ違い多様な個性があること
地球では、このような多種多様な生物たちが、直接的にあるいは間接的に支え合って生きています。
生物多様性は私たち人間にとって、どのような役割を持っているのでしょうか。役割を知ることで、私たちの暮らしにいかに重要であるかが見えてきます。ひとつずつ確認していきましょう。
私たちは酸素を吸って生きています。この酸素は、植物が光合成することによってつくられています。植物が育つためには、豊かな土壌が必要です。
枯れた植物や動物の死骸などを微生物が分解することによって、豊かな土壌はつくられていきます。そして、植物は土壌の中の水を吸い上げ、大気中に放つことで水の循環を担っています。
こうしてみると、さまざまな生物がつながり合って酸素や水をつくりだし、いのちを支えていることがわかります。
私たちが普段口にしている食べ物や、身に着けている衣類は、もともとは自然や生物からもたらされたものです。
例えば、肉や魚は生物のいのちをいただいており、果物や野菜なども自然からの恵みです。また、新聞や本などの紙製品や、ティッシュペーパー、家の木材なども木から資源を得ています。
衣類の原料となる綿や麻、毛や絹も植物や動物からつくられています。当たり前のように使っている生活日用品さえもすべて、大切な資源なのです。
医薬品にも、植物や海の生物からもたらされているものが多くあります。医薬品の成分には、5万~7万種もの植物から得た物質が貢献しているといわれています。海の生物から抽出された抗がん剤が世界で広く利用されている例もあります。
多種多様な自然環境の中には、まだ発見されていない物質も多く、それらが難病の治療などに役立つ可能性があると考えられています。
生物多様性があるからこそ、さまざまな文化や自然にかかわる活動が生まれています。
例えば、農村で行われる収穫祭や自然の恵みに感謝するお祭りがありますが、それぞれの地域で生物多様性とのつながりから、独特の伝統文化が育まれてきました。
また、山や川、海があるからこそ登山やキャンプ、海水浴などの活動が楽しめます。海では魚を釣ったり、自然の野山では虫や鳥を観察したりすることができます。
さらに、動物園や水族館といった場所では多種多様な生態の生物が存在しているおかげで、それらを観察し、学習することができます。
山地には樹木があるおかげで、土砂災害を防ぐことができています。例えば大雨が降った時には、森は土壌が流れ出るのを防ぐ役割を果たします。
また、土が雨水を蓄えるため、川に流れ出る水量を抑えることができます。それによって洪水を防ぐことにも役立っているのです。
加えて、市街地で見かける街路樹は、大気汚染や騒音を防ぐ役割を担っています。
このように私たち人間の暮らしは自然に守られており、さまざまなところで生物多様性によって助けられているのです。
自然や生物からの恵みのうえに、私たちの暮らしは成り立っています。しかし、人間の活動が原因で自然や生物たちのつながりが脅かされ、絶滅の危機にさらされている生物が増えているのが現状です。
主に、開発による自然破壊や、動植物の乱獲、里山や田んぼの荒廃、外来種の持ち込みなどが問題となっています。また、忘れてはならないのが地球温暖化です。気候変動で環境が変わり、生存危機に直面している生物がいたり、作物が育たないなどの食料問題が起こったりしています。
私たちが生きていくうえで、環境にまったく負担をかけないことは不可能でしょう。私たちはそれを理解しながら、自然や生物からの恵みに感謝し、生物多様性を守っていく必要があります。それはSDGs14「海の豊かさを守ろう」、SDGs15「陸と森の豊かさを守ろう」にも通じる課題です。
資源を利用しながらも保護していくためには、自分が普段使っているものは何を原料としているか、加工するために環境に負荷をかけていないか、そういったことに関心を向けることも大切です。
ひとりひとりが生物多様性のことをよく知り、自然と共存していることを感じることが、行動につながる第一歩と言えるのではないでしょうか。
https://www.jica.go.jp/nantokashinakya/sekatopix/article046/index.html
https://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/about.html
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3517.html