今、気候変動の問題を解決するにあたって地球温暖化への対策が求められています。しかし一方で、気候変動をめぐって懐疑論・否定論が巻き起こっています。
そもそも懐疑論とは、ある物事や概念に対して疑いを抱く考えのこと。否定論とは、その物事や概念に対して否定した考えを持つことをいいます。
なぜ、気候変動に対して、懐疑論や否定論が起こるのでしょう。また、それにはどのような主張があるのでしょうか。今回は気候変動懐疑論・否定論が起こる背景や主張、地球の現状などを詳しく解説します。
気候変動懐疑論・否定論とは、「地球温暖化は嘘」「地球温暖化の原因は人為的なものではない」という気候変動に対する異論や反論のことです。
もともと気候変動には、自然的要因と人為的要因があると考えられています。しかし、近年加速している温暖化は、人間の活動による二酸化炭素の排出量の増加が大きな要因とされています。
けれどもこの考えに対して、「温暖化は人為的要因によるものではないので、対策をしてもどうにもならない」というような主張が懐疑論・否定論にあたります。
では、一体なぜ懐疑論や否定論が巻き起こるのでしょうか。米国では共和党支持者が温暖化による気候変動は人為的要因によるものではないとして、懐疑論を唱えています。
党派によって主張が異なる特徴があり、非主流派の科学者たちが、メディアを通して懐疑論・否定論を発信していることもあって、日本よりも懐疑論・否定論派が多い傾向です。
しかし、気候変動が人為的なものとして認められない理由は、他にもあると考えられます。それは、気候変動による影響が多くの人にとって自身で明確に確認できるものではないからです。
温暖化によって本当に海面の上昇が起こっているのか、あるいは急激な気温上昇は本当に起きているのか、このような疑問が懐疑論・否定論の拠り所となっているのでしょう。
懐疑論・否定論の中でもよくあるのが、「温暖化は人為的ではなく自然のサイクルによるもの」という説です。
現在の急激な温暖化も、自然のサイクルで「今が気温の上昇期である」といった考えを持っています。このサイクルは実際に存在しており、「ミランコビッチサイクル」といいます。
ミランコビッチサイクルとは、
地球の自転軸の傾きや地球が太陽の周りを回る軌道が周期を持って変動することによって生ずる2万〜10万年スケールの北半球夏季の日射量変動(国立環境研究所)
のことです。
これによって、地球への日射量の差が生じ、地球は約10万年ごとの長期スケールで寒くなったり(氷期)と暖かくなったり(間氷期)を繰り返しています。
間氷期には日射量が増えるため、気温が上昇し、地球上の氷がとけて海面が上がるという現象が起こっています。それだけでなく、ひとたび温暖化が始まると温室効果ガスやメタンガスの濃度が高くなり、ますます温暖化が促進されたことが研究で明らかとなっています。
ここまで聞いた人は、温暖化は自然のサイクルによるものだと思い込んでしまうかもしれません。しかし、一方でこの説に対しての反証もあります。実は、現在の気温上昇は今だかつてないほどのスピードだということです。
具体的に説明すると、20世紀後半から起こっている気温上昇は、氷期から間氷期にかけて気温が上がる速度の約10倍速いといわれています。この気候変動のスピードはミランコビッチサイクルの日射量の変動のみでは説明できず、人為的な温室効果ガス濃度の増加が原因であると考えられています。
また、氷期(寒冷期)がくれば温暖化が収まるのではという考えに対して、国立環境研究所の地球環境研究センターの研究では、理論的な計算から今後3万年以内に氷期が始まる確率は低いと予測しています。
さらに、大気中の温室効果ガス濃度の高さによっては、氷期の開始が遅れる可能性もあると指摘されているのです。
このような研究結果から、気候変動は自然の要因ではなく、人為的要因によるものである可能性が高いとされています。
気候変動について、さまざまな議論が展開されていますが、今まで地球が経験したことのないスピードで温暖化は確実に進んでいます。
対策をとることが、温暖化を食い止めることにつながっていきます。これを機会に、ぜひあなたも気候変動について考えてみてはいかがでしょうか。
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/whitep/3-1.html