食事による健康法として、しばしば取り上げられる「グルテンフリー」。そもそもグルテンとはどんなもので、私たちの体にどのような影響を与えるのでしょうか?今回はグルテンとグルテンフリーによる体の変化についてご紹介します。
グルテンとは、小麦粉に含まれるグルテニンとグリアジンという2種類のたんぱく質が絡み合ってできたものです。小麦粉に水を加えてこねることでこの2種類のたんぱく質が結びつき、グルテンになります。グルテンは粘弾性があり網目構造を作るため、この性質を利用してパンやケーキ、ピザやパスタ、お菓子などが作られています。こうして考えると、グルテンはわたしたちの身近に溢れていますね。
グルテンフリーとは、先に挙げたようなグルテンを含む食品を摂取しない食生活のこと。元々はセリアック病患者の食事として生まれた食事療法です。
セリアック病とは、遺伝性の自己免疫疾患の一つです。グルテンに異常反応を示し、自己免疫系が小腸の組織を攻撃することで炎症が起き、小腸の細胞が破壊されてしまいます。その結果、栄養素の吸収が低下し、腹痛や下痢、倦怠感など、様々な症状が出ます。
セリアック病以外にも、グルテン不耐症(過敏症)、グルテン(小麦)アレルギーの方々にも、グルテンフリーの食生活は有効と言われています。
近年、グルテンが脳に炎症を起こし、腸にも小さな穴を開けるという説が話題になっています。米国でベストセラーになった『「いつものパン」があなたを殺す 脳を一生老化させない食事』で、神経科医デイビッド・パールマター氏らが指摘している説です。更には血糖値の上昇や糖質中毒の原因になり、体や肌に様々な悪影響を与える可能性があるとも言われています。
身近な不調では、ニキビや肌のカサつき、便秘、偏頭痛、不眠など。他にはアルツハイマー病(認知症)や記憶障害、脳の機能低下、うつや精神的な問題、糖尿病など、グルテンが影響する可能性があるとされる健康問題は多岐にわたります。自分はグルテンに耐性があるのかを知ることが、いかに大切なのかがうかがえます。
グルテンフリーを世に知らしめたのは、テニス界絶対王者ノバク・ジョコビッチ選手です。彼はグルテン不耐症であり、かつては試合中に息が苦しくなり、プレイが出来ないこともあったそう。その後、食生活をグルテンフリーに変えたことで体調が改善。2011年にグランドスラム4大会中3大会を制し、51戦中50勝という圧倒的な記録を挙げ、男子世界ランキング1位に。グルテンフリーの食生活によって不調を改善出来た代表例ですね。
・集中できない
・予期せぬ体重の増加または減少、むくみなど
・免疫機能の異常
・頭痛や偏頭痛
・湿疹や赤み、にきび、かゆみ、乾燥肌など肌の問題
・疲れや慢性疲労、倦怠感
・下痢や便秘を繰り返す
もしこれらのサインに当てはまるようなら、一度グルテンフリーを試してみてもよいかもしれません。小麦を避け、米を主食とした和食メインの食生活をまずは2週間続けて、体調に変化があるかを見てみてください。
身近だけれど、人によっては不調の原因にもなりうるグルテン。一度グルテンフリーの食生活を試し、自分の体に合うかどうかを見てみるのも、よいかもしれません。
https://toyokeizai.net/articles/amp/145054?page=2
デイビット・パールマター、クリスティン・ロバーグ
『「いつものパン」があなたを殺す 脳を一生老化させない食事』2013、三笠書房
ノバク・ジョコビッチ『ジョコビッチの生まれ変わる食事 新装版』2018、扶桑社