プラスチックによる海洋汚染に、私達ができること

プラスチック廃棄物問題

海洋における環境問題は世界的に大きな課題となっています。
海に流出するプラスチックごみの量は世界中で年間800万トンともいわれています。

さらに、2050年には海洋プラスチックごみの総重量が海に生息する魚の総重量を上回ることが予想されています。
海は全世界とつながっており、これは全ての人にとって他人事ではない問題です。
最近では国連総会が、2021年からの10年間を持続可能な発展のための国連海洋科学の10年(UN Decade of Ocean Science for Sustainable Development)とすることを決議するなど、海洋汚染についての問題は世界的な注目を集めています。

汚染の原因は様々ですが、特に問題となっている原因の一つが、プラスチック廃棄物です。

目次

プラスチックごみが海に与える影響

プラスチックは「軽くて丈夫」という理由で、日用品をはじめとする多くの製品に使用されています。
しかし、使用済みのプラスチックについてはどのような処理方法が適切か、様々な議論が行われている段階にあり、いまだに課題が多くあります。
不適切な処分、不法投棄などにより海へ流出すると、プラスチックは長期間分解されずに残り、様々な問題を生んでしまいます。

例としては、漁獲用の網に海へ流出したごみがかかることによって、海洋産業に多大な影響が及んでいることが挙げられるでしょう。
しかし、とりわけプラスチックごみにおいて重大な問題とされているのは、マイクロプラスチックに関する問題です。


マイクロプラスチックとは、大きさが5㎜以下のプラスチックごみの総称です。
非常に微細なマイクロプラスチックは海洋中に大量に存在しており、大気、雨水、大気降下物中を経由して海洋以外の広域に輸送されていることも確認されています。

また、生物の体内に取り込まれた場合の有害性に関しては、プラスチック自体の物理・化学的な特性に加え、添加物や環境中で吸着した残留性有機汚染物質による悪影響が懸念されています。

マイクロプラスチックは大きなプラスチック廃棄物とは違い、比較的小さな海洋生物(プランクトンや貝など)にも取り込まれてしまうので、より多くの生物へと汚染が広がってしまいます。
食物連鎖による生物濃縮を経て、最終的には人間の体内にまで有害物質は取り込まれてしまうのです

マイクロプラスチックの健康に対する影響はまだ明らかでない部分が多く、その危険性は計り知れません。

プラスチックごみに苦しむ魚

プラスチックごみを減らすためにできること

このように、プラスチックによる海洋汚染は単に周辺の景観や漁業設備を損なうだけでなく、我々の生活にも密接に関係し、悪影響を及ぼす問題です。

ところで日本は世界第6位という非常に大きな領海を有します。
その一方で、一人あたりのプラスチックごみ排出量がアメリカ合衆国に次いで世界第2位と大量のプラスチックごみを排出している国でもあります。
つまり、海洋のプラスチックごみ問題について、日本の責任は非常に重いということが言えるでしょう。


よって、日本も海洋汚染対策を積極的に講じていく責任がありますが、前述したとおりプラスチックごみの処理にはまだまだ課題が多くあります。
日本では埋め立てなどの持続性の低い処理方法がいまだに多く使用されており、根本的な対策は依然として進んでいません。
そこで今からでもできる対策として大切なのが、一人一人の意識の改善です。
基本的な実行内容としては、3R運動が挙げられるでしょう。
ごみの排出量を減らし、再使用やリサイクルを率先して行う事から始め、生分解性プラスチックなど環境に優しい商品の購入を心がけるなど、小さなことから一歩ずつ取り組んでいくことが重要です。

皆さんも、是非海洋環境を守るために何ができるか、関心をもち身近なところから行動を始めてみましょう。




参考:
大塚佳臣、高田秀重、二瓶泰雄、亀田豊、西川可穂子「マイクロプラスチック汚染研究の現状と課題」『水環境学会誌』Vol.44, No.2(2021)
白山義久「「国連海洋科学の10年」に向けた、日本学術会議の取組み」『学術の動向』26巻1号(2021)

守るべき日本の美しい海

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