水質汚染の問題は、世界でも大きな課題として取り上げられています。持続可能な社会を目指す取り組み「SDGs」の中にも、6番目に「安全な水とトイレをすべての人に」という目標があります。
日本では当たり前のように使える安全な水とトイレですが、今世界はどのような状況なのでしょう。
今回は、世界における水質汚染の現状や、生活排水の影響などを見ていき、私たちができる水質汚染対策を考えていきましょう
まずは、世界における水質汚染の現状を見ていきましょう。
世界では約20億人が安全に管理された水を利用できずにいます。そのうちの1億2,200万人が河川や湖、用水路から汲んできた水をそのまま使用しています。
浄水処理されていない水は、泥や細菌、動物の糞尿などが混じっている、大変危険な水です。不衛生な水で手を洗ったり、飲んだりすることで、下痢や感染症を引き起こし、命を落とす人も少なくありません。
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世界では年間180万人の子どもが不衛生な水の使用が原因で死亡しています。
昨今では、感染症を防ぐために手洗いやうがいが習慣化されていますが、汚れた水源で手を洗っている子どもたちは、かえって病気にかかってしまうのです。
子どもは抵抗力が弱いため、特に下痢や肺炎などにかかりやすく、命を落としているのが現状です。
水質汚染の大きな原因は、産業排水だというイメージがあるかもしれません。しかし、世界における水質汚染の最大の原因は生活排水です。
生活排水は産業排水のように、特定の成分が大量に流れ出るわけではないものの、小規模でありながら常に一定の汚水を排出しています。
世界の生活排水の量は産業排水を上回っており、その90%は浄水処理されずにそのまま海や川に流れ出ていることが最近のデータで明らかになっています。特にアフリカ、東南アジア、インドなどの途上国では排水処理率が低いままです。
例えばインドでは、人口増加で下水処理が間に合わず、糞尿を含む排水の3分の2がそのまま流れ出ている状況です。
このような状況を打開するためには、排水処理の技術や施設などの普及を進めなければなりません。
では日本で暮らす私たちにとって水質汚染は無関係なのかというと、そうではありません。日本では水質汚濁防止法などの各種規制により、産業排水による汚染は大きく減少しました。
しかし生活排水に関しては厳しい規制もないため、いまだ深刻な状態です。
では、水質汚染を改善するためには、個人で何ができるでしょうか。
食べ残しや飲み残しをしないことで、生活排水の量を減らすことにつながります。
家で食事をする時にはあらかじめ食べ切れる分、飲み切れる分だけ用意するようにしましょう。
料理をする際は、水切りネットなどを使い、野菜の切りくずが流れ出るのを防ぎましょう。生活排水とともに生ゴミが流れ出てしまうことで、水質汚染の原因になります。
調理で残った油は継ぎ足して使うなどして、再利用することをおすすめします。油をそのまま捨てると排水管が詰まるだけでなく、当然ながら川や海は汚れてしまいます。
再利用をした油を捨てる時には新聞紙などで吸い取り、燃えるゴミとして出しましょう。
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お風呂でシャンプー、リンスを使う際には、適量を守り、使い過ぎないように注意しましょう。シャンプーやリンスには化学物質が使われていることも多いため、使い過ぎてしまうと海や川の生態系にも影響を及ぼす可能性があります。
多く使用したからといって効果が上がるわけではないため、適量を守って使いましょう。
プラスチック製品の使用を減らすことも、水質汚染対策のひとつです。
例えば、スーパーなどで見かける肉や魚を入れたトレーや、惣菜をパック詰めしている容器、飲料水の入ったペットボトルなどがあります。
これらは適切に処理されず、川や海に流れ着くものも多いのが現状です。やがてプラスチックゴミは太陽の光などで劣化し、有害物質が溶けだしたり、5mmほどの小さなマイクロプラスチックとなります。
こうして水質を悪化させ、生態系にも影響をもたらすため、できるだけプラスチック製品の使用を減らすようにしましょう。
世界には安全に管理された水を飲めない人が大勢います。不衛生な水が下痢や病気を引き起こし、命を落とす人も少なくありません。
水は私たちが生きる上で必要不可欠であり、世界の水問題は決して他人事ではないのです。生活排水による汚染が続けば、今よりも状況が悪化することも考えられるでしょう。
水質汚染を防ぐためには、私たち一人ひとりが水を汚さないよう努めていく必要があります。ぜひ、今回紹介した水質汚染対策を参考に今からできることをはじめてみませんか。
https://data.unicef.org/resources/progress-on-household-drinking-water-sanitation-and-hygiene-2000-2020/